第34話『お経』@ 林檎◆vCMeD/yt1 様

去年、近くの神社で夏祭りがあった日のこと。
男女数名で近くの神社(夏祭りの場所とは別)に肝試しに行ったときのことです。
そこは曰く付きの、そんなに有名ではない小さな…少し寂れた神社でした。
暗くなってきた7時ごろに残った四人で神社の奥まで行こうという話になり、
一人ずつ行くのは気が引けたので「みんなで行こう」、と提案しました。

神社のお賽銭箱の前まで来て、
みんなでお祈り?をして、いざ! と奥に入ろうと向きを変えたとき――。
どこからか、微かにお経が響き始めました。
どこから聞こえているのか、それは一瞬にして理解出来ました。
お賽銭箱のあった社の近く…
奥へと続く道の横に建てられていた小さな小屋。
そこから、微かに人の声のような、
初詣などでよく聞くお経のような声が聞こえていました。

「ここって、今、誰も居らんのちゃうん・・・?」
隣に居た友人が口を開きました。
その顔は真っ青だったのを、今でも覚えています。
で、臆病な私がその言葉に本気で怖がって、
私を筆頭に、入口付近まで急いで戻っていきました。

あとから聞いた話ですが、その神社で昔
同じように肝試しをしに来た男性の一人が行方不明になっていたことを知りました。

お経が聞こえていた場所なんですが、
なぜか紙切れが貼ってあったのを妙によく覚えていました。
あれは一体、なんだったのでしょうか。

もしかして、と、私たちが彼の二の舞にならないように
なにかが引き止めてくれたのかもしれません。
そうだったら、嬉しいのですが。
もし、私達が奥まで行っていたら……と考えると、
今度はカメラとか持って奥に挑戦したいところです。
まあ、一人じゃ絶対行きませんが。