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呪地蔵

コオリノ@特選怖い話:2019/02/24 09:06 ID:ootLqqjU

 呪いってのは、俺が思っていた以上にそんな単純なものじゃなかった。これは、そんな話だ……。

まだ俺が大学一年生の頃、当時俺は大学のY先輩の家に入り浸っていた。

Y先輩の家には常に5人〜8人ぐらいの人間が出入りしていて、皆何をしているかというと、朝から晩までとにかく麻雀。

寝ても覚めてもだ。誰かが寝たら手が空いてる奴と交代。そうやって一日中雀卓囲んでた。

そんなある日、

「なっ呪いの地蔵、見に行こうぜ?」

深夜1時、皆のテンションも深夜テンションに切り替わってきた頃に、Y先輩と良くつるんでいたH先輩が突如言い出した。

部屋にいた5人が一同はあ?って顔でH先輩の方を振り向く。

この人はたまに思いついた事をそのまま口に出す癖がある。その時もまあ、はいはいでたでたと思ってたんだけど、

「何それ?面白そうじゃん!」

と、Y先輩が超ノリ気で、その言葉に他のメンツも話しに乗っかりだしたんだ。

その後の行動はめっちゃ早かった。あれよあれよという間に皆車に乗り込んで目的地へと出発。

行く途中の車内で、俺はH先輩から件の呪いの地蔵の話を聞いた。

場所はK市にある○倉南区にある古い神社だ。

その神社にちょっとした桜並木の細道があって、墓石がいくつか立ち並ぶ場所があるんだが、その墓石に隠れるようにして小さな御堂があるらしい。

その御堂の中に呪われた地蔵があるとの事。

ありきたりな眉唾もんの話だが、見に行くなら今しかない。と思い、H先輩はあの場で皆を誘ったらしい。

「ここココ、あの馬鹿でかい木が目印なんだよ!」

運転していたH先輩はそう言って車を止めると、子供みたいにはしゃぎながら車から降りて神社の中へと入って行く。

皆その様子をやれやれといった感じで笑いながら、境内の闇の中に、吸い込まれるようにして進んで行くH先輩の跡を追った。

予め用意した懐中電灯を頼りに、暗闇の中を進んでいく。

時刻も深夜2時を回っているせいか、流石に境内には陰湿で不気味な雰囲気が漂っている。

間違っても一人では来たくない場所だ。

だが今は、若干騒がしくもあるが大人が5人もいる。まあ逆を言えば、大の大人が揃いもそろって何やってんだって話だが。

とりあえずそのおかげもあって不思議とそんなに怖いという印象はなかった。

「おーい、ここだここ!」

H先輩の声の方に明かりを向けると、無機質な平たい石の表面が明かりに照らされた。

「うわっ」

誰かが声を上げた。

照らされた無機質な石、それは目の前に立ち並ぶ無数の墓石だった。

その墓石の隙間から枝のように生えた人間の腕が、こちらに向かって手招きしていた。H先輩だ。

墓石を回り込むようにして裏手に回ると、H先輩のすぐ目の前に、小さな御堂があるのが見えた。

「この中に、地蔵が?」

言いながら、俺は明かりで確認してみた。思っていたよりもかなり小さな御堂だ。

「見てみろよこれ、ちょっと雰囲気出てね?」

H先輩はそう言いながら、持っていた懐中電灯で御堂の扉辺りを照らして見せた。

それを見たY先輩が、

「うわっ!け、けっこうまじっぽいな……」

と怪訝そうな顔で言った。

俺もその扉を見てY先輩と

同意見だった。

所々カビが生えボロボロになっていた御堂の扉は、中太のしめ縄が厳重に巻かれており、まるで封印を施しているように見えたからだ。

「この中に入ってんのかな?」

H先輩はそう言うと、さも当然のようにしめ縄をとり始めた。

「えっまじ……?」

呆気にとられる俺たちを他所に、H先輩はしめ縄を無造作に外すと、御堂の扉を開けた。

扉の中は小さく、H先輩の体が邪魔で中の様子が良く見えない。

「おっこれか?呪いの地蔵って……あっ!?」

H先輩の声に思わずその場にいた全員がびくりと体を震わせた。

「な、なんだよ急に声出して、やめろってそういうの」

Y先輩はそう言いながらH先輩の側に駆け寄った、その時だ、

「うわっ!H、お前それ何持ってんだ?」

Y先輩だ。突然H先輩に向かって喚く様に言うと、H先輩が手に持っていた物を強引に奪い取り、それを御堂の中に戻し、両手を合わせ合掌した。

いきなりの事で何がなんだか分からない、ただ、明かりを向けた一瞬、H先輩が手に持っていた物が、ほんの少しだけ見て取れた。

何か丸い球体だった。石でできた丸い球……そこまで思い返し俺はハッとした。

もしかして……地蔵の……頭?

その瞬間、辺りを急激な寒気が襲った。

「おい、何か寒くね?」

誰かが言った、俺だけじゃない。季節は夏。真夜中と言えど、この急激な冷え込みようは明らかに常軌を逸している。

Y先輩も何かを感じとったのか、その場に突っ立っていたH先輩の腕を掴み強引に歩かせた。

「帰るぞH!」

「えっ?何で?来たばっかじゃん!」

「馬鹿か!調子乗りすぎだお前」

Y先輩のこの慌て様、やはりだ。あの時H先輩が手に持っていたものは地蔵の……。

結局その後俺たちは、不満気なH先輩と、どこか神妙な顔をしたY先輩の運転する車に乗り込み、何事もなく帰路に着いた。


「悪い、何か今日はもう麻雀する気になんねえわ、ごめんな」

Y先輩はH先輩の行動に腹を立てたのか、その日は皆を帰らせた。

最後まで不満気なH先輩は、結局あの後一言も喋る事なく、Y先輩の家を後にした。

その日以来どうも気まずくなった俺は、Y先輩の家に立ち寄らなくなった。

そして留年してしまった事もあり、大学を辞め、田舎へと帰る事になった。



あの日から数年、地元で就職した俺は、結婚して子供もでき、世間一般的な幸せとやらに興じて日々を送っていた。

そんなある日、俺の元に一通の手紙が届いた。

大学時代Y先輩の家によく一緒にたむろしていた同級生の一人、Aからだった。

大学時代の仲間を集めて同窓会を開きたかったらしく、中退した俺にもわざわざ手紙を送ってくれたのだ。

何だか妙な懐かしさを感じた俺は、手紙に書いてあった連絡先に早速電話してみることにした。

「あっもしもし?俺だけど」

「おおっ久しぶりだな!声かわんねえなお前、すぐ分かったぞ」

「えっまじ?てか本当に久しぶりだな。H先輩とあの神社に行って以来だろ」

俺がそう言うと、なぜかAは押し黙ってしまった。

「おいA、どうした?何かあったのか?」

急いで聞き返すがAからの返事はない。

「A、なんだよ
、どうかしたのか?」

すると、電話口からAの弱々しい声が聞こえた。

「なあ、お前、呪いって……信じるか?」

「呪い?何言ってんだ急に。気は確か……」

そこまで言いかけて俺は口をつぐんだ。

一瞬、あの時、御堂の扉を開け、地蔵の頭をもぎ取ったH先輩の姿が、俺の頭の中を過ぎったからだ。

呪いの地蔵……。

「お前、あのあとすぐに大学辞めちまって知らないんだったな。死んだんだよ、あの後」

頭が真っ白になりそうだった。

呪い?地蔵の?そんな、そんなテンプレのような事が本当にあるのか?テレビやネットの怪談話でよく目にするような、あんな話が……。

「呪いで死んだって言うのかよ……?そんなの偶然だろ!?そりゃ確かにしめ縄ほどいたり地蔵の頭もぎ取ったりしたかもしんねえけど、それでH先輩が死んだって?いやいやいや、ないってそんなの」

そんな興奮しながら話す俺に、Aは言った。

「H先輩?違うよ、死んだのは、Y先輩だ……」

「はあ?」

思考が一瞬停止した。

首を振って頭の中のモヤをかき消す。

「ふざけんな!なんでY先輩なんだよ?あの人は何もしてないだろ!?」

そう、あの時Y先輩は、H先輩の蛮行を逆に戒めたのだ。地蔵の頭を御堂の中に戻し、手まで合わせた。

もし本当に呪いがあるのなら、なぜそんなY先輩が呪いで死ぬ事になる?言っちゃ悪いが、もし呪いで死ぬのなら、それはH先輩の方だろう。

「俺な、H先輩から全部聞いたんだ。あの時起こった事」

「あの時の?」

Aの言葉に俺は聞き返した。すると、Aは重い口を開くようにぽつりぽつりと、H先輩から聞いたという話を、俺に聞かせてくれた。

Aの話によると、あの時、H先輩が御堂の中で見たものは、頭が逆を向いていた地蔵だったらしい。
正確に言うと、頭の取れた地蔵が、頭だけ後ろを向くようにして地蔵の体の上に置かれていたというのだ。

つまり、H先輩は地蔵の頭をもぎ取ったのではなく、予めもぎ取られ、なぜか後ろを向くようにして置かれた地蔵の頭を、手に取っただけだったのだ。

そしてそれを見ていたY先輩が、地蔵の頭を元に戻し、手を合わせたというのだ。

そして、Y先輩はその二週間後、自宅のドアノブにタオルを引っ掛けそこで首を吊っていた。

第一発見者のアパートの管理人さんによると、首を吊っていた先輩の姿は、なぜか手を合わせ合掌のポーズを取ったままの姿だったらしい。

なぜ、なぜY先輩だったのか?その疑問に、Aはこう答えた。

「H先輩、この前言ってたんだ。あの時、御堂にはしめ縄がされてた。それって、誰にもあれを見せたくなかったからじゃないかって。自分があの地蔵の頭を手に取った時も、Y先輩が地蔵の頭を御堂に戻した時も、H先輩、一度も地蔵の顔、見てないんだって。あれ……本当は顔見て拝んじゃいけなかったんじゃないか?」

最後まで話してくれたAに俺はH先輩は今どうしているのかと尋ねた。

「H先輩、確かめて来るって言ってた。けど、その日以来H先輩と連絡が取れないんだ。気になってあの地蔵の所にも行ってみたんだけど、御堂も、あの地蔵もどこにもなかった。」

これが、Aから聞いた、事の顛末の全てだ。

H先輩は一体どこに消えてしまったのか、あの地蔵は何だったのか、そしてこれが最も重要な事だ。

あの地蔵は今も、どこかで誰かが拝みに来るのを、待っているのだろうか……。

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