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カラス

きらら397@特選怖い話:2018/06/22 13:05 ID:6LKm09lk

 この話はまだオレが小学生だった何十年も昔のことだ。その日はたぶん法事だったのだろう。親戚の多くがオフクロに実家に集まっていた。実家は北国の港町にある。その港町には標高300mくらいの牛が寝そべったような山が湾を抱くようにあり、実家はその中腹にあった。
 実家は平屋ながらも大きな家と広い庭があり、玄関のわきには大きなイチイの木があった。時折に行ったオレの楽しみは、その木のてっぺんに登って街を眺めることだった。パノラマ状の見晴らしは最高に良かったし、時に吹きあげて来る潮風も心地が良かった。
 そしていつものように登って眺めていると奇妙なものが目についた。
 路面電車の終着駅の近くの家の屋根が一面、真っ黒な炎のようなものがゆらめいている。(え?)と目を凝らすと、どうやらカラスの群れらしい、ぎっしりと犇(ひし)めいている。
 オレは子供らしい好奇心より(気味が悪い)という感覚が先にたった。
 すると下から声がした。
 「そこは眺めが良いわね。私も叱られたけど、小さい頃はよく登ったのよ」見下ろすと、伯母が微笑んでいる。オレは見たそのままを口にした。
 「電停の近くの家の屋根にカラスがいっぱいいる」
すると、伯母はジロリと一瞬オレを睨んだように感じたが、すぐにいつものやさしい笑顔に戻って「どの辺り?」と訊き直した。
 「かあちゃんがいつもお花を買うところだと思う」と答えた。
 伯母は「そうかい。でも、もう降りておいで」とオレを諭し、やがてやさしく両の掌でオレの頬を包むと「アレが見えるのかい?困ったものだね」と少し哀しい表情をした。
 伯母はオレよりすぐ年上の実家の従兄を呼び「京一ちょっと頼まれてくれるかい。電停の花屋に行って、どんな具合か見てきておくれ」と言うと、従兄は「わかった!」と元気に返事をし、坂を駆け下りて行った。
伯母は振り返るとあらたまったように言った。
 「アレが見えることは良子、龍一(オレのこと)のかあちゃんには言ってはいけないよ。良ちゃんは私らの妹だけど見えない人だから・・・怖がるといけない」と、オレの口に人差し指をあてた。
 暫くたつと、従兄の京一が戻って言った。
 「玄関にすだれが下げてあって、ナントカ中って紙が貼ってあって」と言った。その時は要領を得なかったが、いまから思えば「忌中」だったのだろう。
 伯母はやはりという顔をすると「御苦労さんだったね」と言い、家の中に戻って「○○さんのところがお弔いだよ」と皆に伝えた。
 大人たちの用事が済んですぐ、オレは訳が分からないまま、その日のうちに、伯母に実家が檀家だった寺に連れて行かれて、本堂でお経を聞かされた。いまから思えば「お祓い」だったのかもしれない。
 それから実家のお墓参りをして、帰る途中で無縁塚も前を通りかかると、塚にカラスが数羽いたが、そのカラスの目が人のように白目に黒目があった。そのことを伯母に言うと「アレも見えるのかい」と眉を寄せ、繋いでいたオレの手をぎゅっと握った。

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