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震災で拾った子

きらら397@特選怖い話:2016/09/29 12:42 ID:NW2sPAI2

20数年前のこと。阪神の震災のすぐあと、赴任したばかりの大阪支社で休日出勤をしていた。
ひとりきりの支社をあとにするとき、出口の扉を開けると腕の下を子供がするりと抜けて行った。
「はっ?」とキョロキョロすると廊下に白いセーターに半ズボンの5歳くらいの男の子がいる。声をかけようとしたらパッと消えた。
この時点でこの世のものではないことは解ったが、次は後ろに気配を感じ振り向くと、やはりこちらを見ている子供がいる。
「行くとこないなら付いて来ていいぞ〜」と思いもかけない言葉が出た。言ったオレが驚いている有様だ(笑)
オレはその後、何ということもなく1年くらいを過ごし、結婚しほどなく長女が生まれた。
そのころからである。玄関とリビングを仕切るガラス窓のある扉の向こうに、その子供が現れるようになった。
オレはと云うと驚くでもなく(あ〜そうか。付いて来いって言ったもんな〜知らなかったよ)てな、もんだった。
嫁さんは怖がりなので黙っていたが、そのうち赤ん坊の長女の傍らに立ってのぞき込むようになった。悪意はなさそうだったし、そのまま放置。
問題はそのあとだった。
「可愛いだろ○○(名前)って言うんだ」とオレが声をかけてしまったこと。それ以来、頻繁に現れるようになって、オレも何気に声をかけるようになって、それに嫁が気付いてしまったことだった。
(こりゃ〜誤魔化せないなあ〜)と、ことの次第を嫁に話した。
当然、嫁は困惑した。と言うより怯えた。
長女をのぞき込んでいる、ってのが怖かったのだと思う。「私は信じない!」ときっぱりと言い。「そんな話は二度としないで」と釘を刺された。
そんなこんなで月日は過ぎて、相変わらずちょこちょこ現れてはいたが、やがて次女が産まれて、やはり赤ん坊には興味があるらしく、次女が熱を出したときなどは心配そうにのぞき込んだりもしていた。
子供とかあの子と呼ぶのもヘンな感じがして、オレ的に二十歳のころに死んじまった幼馴染の名前を密かに付けた。それ以降「二郎君」と呼ぶことに。
やがて本社に異動になって、引っ越しのときも「付いて来るのかな?」と思ってもいたが、やがて一戸建ての新居にも現れるようになり、内心ほっとした。(笑)
そしてある日、末っ子で産まれた長男が幼稚園に通いだしたころ。
「ママ〜たまに階段とか二階の廊下に、知らない子がいるよ」と話した。
嫁はギョッとした様子で「まだいたの?」とオレに向き直ったので「あ〜ずっといたよ」と答えた。嫁も「信じない!」では済まされないことを察してか「大丈夫なの?」と訊くので「全然大丈夫!むしろ子供らを守っているような気配すらある」とえっへんポーズをとった。
両親のやりとりに困ったようすの末の坊主に「怖くはないよ。二郎君って云うんだよ」と話した。「いつのまに名前まで」と嫁は呆れていたが。
それから、また月日もたって二郎君の輪郭もボヤケ始めてきた。すれ違いざまに感じるのは、自分が何者なのかも解らなくなっているようだった。
そしてある日曜日。
「えっ?」と何かを感じて、二階の昔は川の字になって家族で寝ていた、いまは娘たちの部屋へ慌てて階段を上がって飛び込むと部屋のまん中に水蒸気の渦のようなものが漂っていた。そしてやがて昇るように消えた。
成仏したんだ。そう信じたかったし、そのはずだ。
嬉しくもあり、また寂しくもあり、切なくなって涙が出た。
長女もやはり慌てて部屋に駆け込んできて「パパ!」と叫んだ。やはり、何かを感じたのだ。半分泣き顔になっていた。
「あ〜逝ったよ。きれいな渦になって昇るように消えた」と伝えた。
二郎君はオレら家族と15年を過ごした。

そして、つい最近のこと。
「いつも夏休みだよね〜」次女が末の坊主と話している。
「そう、いつも夏休み。このまえ二階の廊下にいた」と末の坊主。
「何のこと?」と訊くと。
「二郎君だよ。夏休みだけなんだよ会えるのが、わりとはっきりと見える」と末の坊主。
そして「あ〜!」とオレは気が付いた。お盆なのである。
二郎君には本来の家族もいるのであろうけれども、彼にとってはオレらも家族なのだろう。
オレは大笑いした。なんとも痛快ではないか。20数年前にたまたま拾った子供の霊がお盆にわが家に帰ってくる。
オレは笑いながらも目がしらが熱くなっていた。

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